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BLUE HEARTS を聴きながら

BLUE HEARTS を聴きながら

恐怖のトレーニング

おっしゃーああああ!!!!
海外での初仕事。がんばるぞおおお!!!

って、燃えてた。

アクセサリーを販売するというジャンル的にはやったことのない仕事だったがオレには少し自信があった。
オレの性格的に接客業は向いている。東京でのサラリーマン時代は営業をやっていた。なんとかなんべぇ。

そんな甘い気持ちでいたら釘を刺された。

仕事が決まったことを友達に報告したら、

「え?マジ?あそこで働くの???」

って答えをよく耳にする

どうやらワーホリできている日本人には有名なお店らしい。
何が有名って、オーナーがね。
評判悪すぎ。

「まあ、がんばれよ・・・」

なんて、いきおいのない励ましを受けて初日のトレーニングにいった。


ケアンズから車で40分くらいかけたところにキュランダという村がある。
世界遺産の熱帯雨林の中にあるキュランダは有名な観光スポット。
日本人がワンサカいる。
その村の中にオレの働く店があった。

初日はケアンズからシャトルバスに乗って、キュランダにいった。
そのバスを降りたところにすぐベンチがあるから、そこに座っていてくれ!という連絡を受けていたので、緊張しながら待っていた。


イラン人のオーナーか・・・
どんなオーナーなんだろ・・・???
ビン・ラディンみたいなかんじなんだろなあ・・・
こえーなあ・・・
怒ったらチャカとかださないよねー?
撃たれんじゃねーの??
日本人スタッフがいい人たちだといいなあ・・・
それにしても、おせーなー。いつくるんだろ?

そんなことを考えながらチョコンと座っていたら、来た。

8人乗りの車に乗って、みんな降りてきた。

「おはよーございまーす!!!」

元気よく、あいさつした。
みんなもあいさつを返してくれて、ホッとした。
多少、顔見知りの人がいてすぐにうちとけることができた。

あとは、オーナーだけだ・・・。

「ハロー!ないすとぅーみーちゅー!!」

って自己紹介した。

「○×¥△◇◎/◆▽・・・・・・・・」(英語)

何言ってるかわからねーけど、笑顔だった。
なんだ、全然怖くねーじゃん!!
意外といい奴なんじゃねーの?
ま、噂なんてこんなもんだよね!

なんて思っていた。

後に、この考えが間違っていたことに気付くのだけども・・・。


なにはともあれスムーズにトレーニングが進んでいった。

商品の説明、値段、割引、一通り大事なことを教えてもらった。
何も難しいことはない。最初だからいっきには覚えられないが余裕だった。
これなら、家に帰って少し復習したら明日には大丈夫だろ?
そんな感じだった。あとは慣れ。
そこで、実際にスタッフ相手に売り込みの練習をした。
これはサラリーマン時代にやった、ロールプレイング形式の売り込み練習が生かされた。全然余裕。

すぐに、合格点が出された。

オレも自信が出てきた。これなら明日からいけるっしょ!!
って思っていたが、最後に

“この店で一番大事なこと”

というレクチャーを受けた。

なんだそれ???

とにかく、この店では特別ルールが存在する。



その後7ヶ月働いた今のオレがまとめてみるとこうなる。

1 長年働いていようが、3日しか働いていないとか先輩後輩関係なし。
  下克上大歓迎!! その日、一番売れた奴が一番えらい!!

2 売れれば何やってもOK!!
  クレーム出ようが関係ない!とにかく売れ

3 売れてるスタッフは休憩も自由。勝手にタバコだろうがなんでも吸ってくれ!
  (売れるんだったらタバコ吸いながら接客してもいい)

4 呼び込み、サクラ、ガンガンやれ!!警察に注意されるまでやれ!!

5 オーナーが黒と言ったら、白いものでも黒に見えるようにしろ!!

6 お客さんに多少のウソはついてもいい。

7 お客が店の敷居をまたいだなら、すぐ接客せよ!!

8 最後まであきらめるな!全力で接客せよ!!アクセサリーがダメなら
  姉妹店のおみやげ屋に案内すべし

9 売れたスタッフにはコミッション受け渡しあり。
  (売れた額の数%を給料に反映する特別手当あり)


以上の事を順守すること。
これを守れないのであれば即刻クビ!!

日本では考えられないことだらけ。
オーナーが日本人じゃないから当然だが、それにしても異常だ。

みなさん、どう思いますか?
この掟があるために、この店はものすごい売り上げをあげるんだ。
とくに9番目のコミッション。これがバカにならない。
まさにオーナーの飴とムチ。

スタッフとオーナーの関係を取り持つ唯一の鍵。
それが金(コミッション)。
実際、給料は他のお店やレストランよりはるかに良い。





こんなオレのあまっちょろい考えだとヤバイ!!

その日一日、他のスタッフの売り方を観察した。本気で。
どんなふうに、どうやって、どのようにすればお客様に買っていただくことができるのか?どうやったら興味をひけるのか?
それをじっくり見れるのは今日一日だけ。
明日からはこのサバイバルレースに参加しなくてはならない。
当然、生き残りをかけるからスタッフ全員が敵になる。
いろいろ観察した。学ぶことも多かった。

トレーニングの日は早く帰された。
次の日からは、家の前までオーナーが迎えにきてくれる。

そして翌日から、オレの7ヶ月間にわたる戦争が始まった。






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